このサイトでもお馴染みの,みぶ真也さんのラジオ関西の「不思議ものがたり“みぶ真也の深夜のみぶ”」
今回はなななんと,「悪魔くん」デス!!!!そして、あたくしが登場させていただいておりますm(_ _)m 
是非皆さん聞いてくださいね!


       みぶ真也さんのこわ~い話「悪魔くん」前編、ラジオ(Youtube)からも聞けます。
          ラジオはこちらにアクセスしていただき,17:30ぐらいから5分間です。


悪魔くん  前編(2012年4月1週)


2012年明けに開催された実写TVドラマ「悪魔くん」のファンの集いは盛況のうちに幕を閉じた。実写版「悪魔くん」は1966年10月から翌年にかけて当時のNETテレビで放送された少年向けのモノクロドラマだが、斜陽化しつつあった映画界から集まった東映スタッフの技術とセンスで今観ても面白い作品に仕上がっている。当日は下は16歳から最年長は82歳のおばあさんまで、全国から約200人のファンが、会場の床にドラマに出て来たのとそっくりに描かれた魔法陣の周りに集合した。

原作者の水木しげる先生と企画プロデューサーだった平山亨さんからメッセージが届き、情報屋役で出演していた子役で今は声優として活躍している塩屋浩三さん、「悪魔くん」には出ていなかったが主役の金子光伸くんと「ジャイアント・ロボ」で共演した片山由美子さんがゲストとして登場、貴重なエピソードをいろいろ話してくださった。残念ながら主演の3人、つまり悪魔くんを演じた金子光伸さん、悪魔メフィスト兄弟役の吉田義夫さん、潮健児さんは故人となって久しい。

最後にヴォーカルショップのCDに合わせて200人全員でテーマ曲の大合唱になった後、第一話に登場した妖怪ガンマの着ぐるみが会場に現れ大喝采を浴びつつお開きとなった。

「イクさん、お疲れ様でした」名残惜しそうに皆が帰った会場で後片付けをしている幹事の女性に声をかける。イクさんと呼ばれてる彼女は本業は翻訳家なのだが、今回は世話役をしてくれているのだ。 「あっ、みぶさん、今日はありがとうございます。いかがでした?」ぼくが今日の感想と、最近京都撮影所で聞いた吉田義夫さんの生前のエピソードをいくつか話していると

「いひひひひひひひひ!」背後から笑い声が響いて来た。振り返ると、アルバイトが脱ぎ捨てたガンマの着ぐるみの横に一つ目のマネキンが立っていた。

「あ、首人形の回に出て来たマネキン妖怪じゃないですか。こんなサプライズも用意してあったんですね。全然気づかなかった」ぼくが触ってみようとすると

「待って!」イクさんが止めた。

「そんなの用意した覚えはないわ!」

その声に応じるかのようにマネキンの口から白い煙が噴き出して来た。ドラマの中ではこの煙を吸うと人間がマネキン人形になってしまうのだ。

「へえ、凝ってますね、ゴホン、ゴホン」

「だから用意してないって、ゴホン、ゴホン」

二人ともむせ返ってしまう。煙が引いたあと、マネキンの一つしかない大きな目が異様に光ったかと思うと、爆発音がしてホテルの床の一部が砕けた。

「みぶくん、イクちゃん、人形から離れるんだ!!」

背後から声がした。振り向くと、魔法陣の上に悪魔くんが立っていた。


           みぶ真也さんのこわ~い話「悪魔くん」後編
        ラジオはこちらにアクセスしていただき,18:00ぐらいから4分間です。


悪魔くん 後編(2012年4月2週)


「みぶくん、イクちゃん、こっちへ来るんだ!!」

悪魔くんに言われ、イクさんとぼくはマネキン妖怪から離れ魔法陣の上まで逃げ込んだ。

全国から200人が集まった実写ドラマ「悪魔くん」ファンの集いが終った後、ホテルの会場に残っていたぼくと幹事のイクさんの前に本物のマネキン妖怪と悪魔くんが登場したのだ。マネキンの目が光るたびに、その視線の先の床が砕け散る。イクさんがたまりかねたように

「あんなに壊されたんじゃ、会場費の追加がバカにならないわ」

「でも、どうしていきなり妖怪や悪魔くんが急に出て来たんだ?」ぼくは悪魔くんに訊いてみた。

「今日、ファンの皆さんが全国から集まってくれてぼくたちのことや番組が放送されてた頃のことをこの場で思い出してくれたことが大きな力になったんだ。そんな強い気持ちが会場の床に描かれた魔法陣に集中してぼくが実体化できた。でも、同時に…」

「妖怪も実体になったっていうわけね」イクさんがあとを続けた


マネキン妖怪はホテルの床を破壊しつつこちらに近づいて来る。

「あいつはなんとかならないのか?」ぼくは悪魔くんに尋ねる。

「想念や願望で実体化した妖怪の倒し方はこの魔法大全に書いてあるんだけど…」悪魔くんは表紙がボロボロになった分厚い本を取り出した。

「じゃ、調べてごらん。君は一万年に一人の天才児なんだろう?」

「水木しげる先生の原作ではそういうことになってるけど、ぼくは子役としてそれを演じただけだから・・・」

「ちょっと、それを貸して」イクさんが横から魔法大全を取り上げる。

「全体は古代英語で書かれてるけど、この部分は古代のペルシャ語みたいね」イクさんの本業が翻訳家であったことを思い出した。

「魔法陣のそこの1という数字を3に書き換えてみて」彼女に言われたとおり、ぼくが足元の数字を書きなおした。

「悪魔くん、それで呪文をとなえてみて」


「わかった。『エロイムエッサイム エロイムエッサイム 我は求め訴えたり』」


突然、地響きがしたかと思うと、魔法陣から飛び出した光の塊がアトラクションのあと脱ぎ捨てられたままになっていた百目妖怪ガンマの着ぐるみの中に飛び込んで行く。ガンマはムクムクと起き上がり、体中に貼りついた百個の目を光らせたかと思うとマネキンとともに煙になって消えてしまった。

3人の思いを一つになせば幻は消えるであろう、と書かれているわ」イクさんが魔法大全のページを示して言う。


現世は夢となり、夢は現世となる、と」


「イクちゃん、みぶくん、そろそろぼくも夢の世界へ帰らなくちゃ。君たちはこの部屋からすぐに出るんだ」
「わかった、悪魔くん、さようなら」ぼくがホテルの扉を開けようとすると

「みぶさん、私、やっぱり戻らないわ」イクさんはそう言って悪魔くんの所へ駆けて行った。

「片山さんやみんなによろしく。それから、第二回のファンの集いの幹事はお願いね」

そう言い残すと、彼女と悪魔くんの姿は魔法陣の上で一筋の煙となって消えてしまった。
    



FIN

みぶさん、素敵なお話をどうもありがとうございましたm(_ _)m

このページのイラストは、私、Ikuが描きました。お粗末でございました(^人^)





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